○🐢製麺

 うどんで有名な丸亀の大通りから一本中に入った所に一軒のビルがある。一階の道路に面したショーウィンドウには古代中国の聖人である神農(知らない人にはただの変なおじさんにしか見えない)の像や新型コロナの発生源の一つとされる絶滅危惧種,センザンコウの剥製,何かの角,海亀の剥製,薬を調合するのに使う薬研などがディスプレイされている。その麓には平屋建ての小さな工場が一軒ある。敷地に一歩足を踏み入れると大きな番犬が大声でけたたましい声で威嚇してくる。犬を振り切り建物まで着くと入り口らしき場所には消えかけた文字で「○亀製麺」と書かれているのが辛うじて確認できる。おそるおそる戸を開けるとうどんが茹でられている。作業中のおばちゃんと目があったので気まずい思いをしながら「うどん一つ……」と言うと,「はい70円ね。」と目の前のうどんを手でつかんで渡してくれる。売ってくれるのはあくまでうどんだけなので,丼や箸,スープ等は自分でもって行かなければいけないし,店内には客用の椅子もテーブルも無い。丼に入れたうどんをすするととても美味しい。麺だけなのにもちもちして美味しい。持参した醤油や出汁,生卵,ネギ,生姜,かつお,わかめ,とろろ,きつね,おぼろこんぶ,きのこ,肉,天かす,油かす,なると,かき揚げ,もやし,ゴボ天,七味唐辛子,一味唐辛子などを加えるのも悪いとは言わないが,この茹でたてのもちもちした麺を,まずは何もかけず何も添えずに味わうのをお勧めする。

 それにしてもできたてのうどん1玉70円というのは安すぎると思うかもしれないが本当のうどんの値段は70円なのではないか。普段我々がチェーンのうどん屋店舗で見る「かけうどん並274円」などの金額は運送費,電気代,水道代,家賃,広告費,バイト代,フランチャイズ料,法人税,固定資産税等様々な経費がチャンポンされた結果である。

丸亀製麺所

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