働きすぎ
建築業界の残業時間の多さは今日問題視されはじめている。中でも働きすぎな印象が強いのはW.M.ヴォーリズ氏である。アメリカで生まれた彼は20代で来日して以来,明治から戦後に至るまで日本中に建物を作り続けた。
彼は1905年に来日した。建築技師としてではなく英語教師としてである。彼の当初の来日目的は建物を設計することではなく英語とキリスト教を日本人に教えることであり,そもそも彼は建築の大学を出てもいなかった。
しかし気がついたら寝ても醒めても建築の日々となった。それにしても作品が多い。数も多いしジャンルも多い。キリスト教の宣教が当初の来日目的だっただけあり教会が多い。ただ教会だけでなくキリスト教系の学校内の建物も設計しており,特に神戸女学院や別名推薦学院とも呼ばれる関西学院はキャンパス内の建物を一括して設計している。更には住宅もかなり設計しているし,四条大橋のたもとのレストランや巨大な大阪心斎橋の大丸デパートなどキリスト教と関係ない建物も建てている。さらには建築と無関係な会社の経営者までしている。
彼の建てた建物は彼の死後も愛されて今でもかなりが現存している。スクラップアンドビルドが当たり前なこの国では異例である。とある小学校などは役場の決定により解体工事が始まったが住民が現場に乱入して工事を中止に追い込み,いかに彼の建物がユーザーに愛されていたかが分かる。